健康支援サイト

おしりの悩みチェック

監修:吉川 周作 先生(土庫病院 院長)

おしりの悩みチェック

あなたのおしりの状態は大丈夫?

おしりや肛門の変化は、症状に困っていても「病院に行くことは恥ずかしい」と放置されがちです。しかし、その症状は肛門や大腸の何らかの病気のサインである可能性もあります。

チェックシートを利用することで、恥ずかしさを感じずに自分の症状を整理し、医師に相談しやすくなります。おしりや肛門に関する症状で気になることがあれば、チェックシートを活用して医師に相談するようにしましょう。

おしりの不調、その原因は?

ここでは、肛門周辺に関連する病気や、
大腸などの腸管に関連する病気として
代表的なものをいくつか紹介します。
気になる症状があれば、医師に相談しましょう。

痔核(いぼ痔)

肛門で最も多くみられる病気です。肛門内にある血管や支持組織などが集まっている柔らかい組織が大きくなることで起こります。痔核は肛門の歯状線より奥にできたものを「内痔核」、歯状線より外側にできたものを「外痔核」といいます。そのほか内痔核と外痔核が合併した「内外痔核」もあり、これは手術を必要とすることが多いです。主な症状は排便時などに肛門の内側にある痔核が肛門外に出る「脱出」や「出血」「痛み」がみられます。

通常痛みはひどくないですが、常に脱出するようになると腫れを伴って痛みが持続します。出血は貧血になるぐらい多量に出ることもあり、ときに輸血も行います。軽症では生活習慣の改善などで症状が軽減することが多いです。たっぷりと水分を摂取し、食物繊維が豊富な食品を意識して取り入れるほか、過度のアルコール摂取は控えましょう。また、長時間便座に座り続けることは避けます。ただ、出血や痛みなどがひどければ早めに診察を受けてください。通常は座薬や軟こうなどのお薬で対処しますが、治りにくい時や重症化して脱出の症状が続く場合は、手術などの外科的治療が必要です。また、出血する時には腸のポリープや癌が潜んでいることもありますので、早めの診察をお勧めします。

  • 1) 日本大腸肛門病学会編. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版, 南江堂, 2020, p. 8-10
  • 2) 日本大腸肛門病学会 痔核についてのQ&A 2024年1月19日アクセス

裂肛(切れ痔)

裂肛は、肛門上皮(肛門の皮膚や粘膜)に傷ができた状態を指します。主な症状は、肛門の痛みと少量の出血です。裂肛を繰り返すと、肛門が狭くなって排便しにくくなったり(肛門狭窄)、肛門ポリープ、見張りいぼといった痛みを感じない皮膚のふくらみが脱出することがあります。慢性化した裂肛ではときに強い痛みが続くことも経験します。

痛みや出血の治療として、軟こうや座薬などのお薬を使用します。しかし、排便の習慣や食生活を改善して、便通を良くすることがより重要です。裂肛は、硬い便を無理に出すことや下痢で何度も排便することで起こりやすいため、排便を整える必要があります。肉類・脂肪・アルコールを摂り過ぎず、食物繊維が多く含まれる食事をするとともに、排便した後はトイレットペーパーで強く拭かないようにします。また、肛門狭窄の症状が強い場合、肛門ポリープや見張りいぼを患者さんの希望で取りたい場合、痛みが非常に強い場合には手術が必要です。

  • 1) 日本大腸肛門病学会 裂肛 2024年1月11日アクセス
  • 2) 日本大腸肛門病学会編. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版, 南江堂, 2020 , p. 62-64

痔ろう(あな痔、肛門周囲膿瘍)

痔ろうは以下のような過程で発症します。

  1. 肛門内の小さな穴から細菌が入り込み、炎症が起こることで肛門周囲に膿がたまる(肛門周囲膿瘍)。
  2. 肛門周囲膿瘍が潰れたり、医師によって切開されたりして膿が出され、管が残る。

この残った管が痔ろうと呼ばれる状態です。肛門の外にまで穴があき、肛門の内から外へトンネルのようにつながることで、その穴から膿が出る状態が痔ろうです。

肛門周囲膿瘍は、痛みや腫れ、ときには発熱することもあります。軽症では肛門の周囲にしこりを感じられる程度ですが、ときに重症化して敗血症になることもあります。
一方、皮膚に穴があくと持続的に膿が出て、下着を汚すことがあります。
肛門周囲膿瘍の治療は、切開して膿を出すことが基本です。痔ろうはお薬では治りませんので手術を行います。痔ろうの管の形によって手術の方法は異なり、状態に合わせた最適な治療が選択されます。痔ろうの経過が長い方は発癌の危険があること、後で述べますがクローン病が潜んでいることもありますので早めの診察を受けてください。

  • 1) 日本大腸肛門病学会 痔瘻(じろう,あな痔)ってなに?肛門周囲膿瘍ってなに? 2024年1月11日アクセス
  • 2) 日本大腸肛門病学会編. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版, 南江堂, 2020, p. 32, 35

肛門周囲の感染症

肛門周囲の感染症として、梅毒、尖圭コンジローマ(HPV感染)、性器ヘルペスなどの性感染症が挙げられます。性感染症は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)を通じて感染する疾患であり、肛門やその周囲にも症状が現れることがあります。直腸を含む肛門の性感染症の患者さんは痔核や裂肛、痔ろうなどの一般的な肛門の病気に比べると多くはありませんが、近年増加傾向にあります2)

感染経路としては肛門での性的な接触が大部分ですが、それ以外に入浴やトイレを介しての感染、産道感染の可能性も指摘されています。肛門の性感染症の症状は、不快感、かゆみ、痛み、発疹、潰瘍などで、放置すると重篤な症状に発展することもあります。

  • 1) 日本大腸肛門病学会 肛門部で見られる性感染症(梅毒、尖圭コンジローマ、肛門部ヘルペス) 2024年2月8日アクセス
  • 2) 黒川 彰夫ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2006; 59: 822-826.

クローン病

(ア)肛門上皮から発生した肛門周囲膿瘍
(イ)直腸の潰瘍を原発口とする痔ろう

クローン病は、口腔から肛門までの消化管に炎症が起こる疾患であり、特に小腸や大腸、肛門周辺でたびたび炎症や潰瘍が繰り返し起こります。10~20代と比較的若い方に発症することが多く、原因はまだ解明されていません。

主な症状は腹痛、下痢、血便や発熱などです。さらに、腸管が狭くなる狭窄などの腸管の合併症だけではなく、関節炎などの腸管以外の合併症も引き起こします。
クローン病患者さんの約50%から80%に肛門病変がみられるとの報告があります3)
クローン病の方の肛門周辺では、裂肛、痔ろう、皮垂、肛門ポリープ、深い潰瘍や肛門狭窄などの病変が多彩にみられます。
まれですが炎症が長く続くと癌を発症することもあります。
おしりの症状は患者さんから相談がないと医師も見過ごしてしまうことがありますので、気になる症状があればチェックシートを用いて医師に相談しましょう。

治療では、栄養療法や薬物療法などの内科治療を中心として行う一方、狭窄、膿瘍などの腸管の合併症には外科治療を行います。
薬物療法では、内服治療に加えて、抗TNFα抗体製剤をはじめとした生物学的製剤を用います。外科治療では、内科治療で改善できない腸管の合併症や肛門病変に対して手術を行います。

  • 1) 難病情報センター クローン病(指定難病96) 2024年1月11日アクセス
  • 2) 日本大腸肛門病学会 クローン病の肛門病変 2024年1月11日アクセス
  • 3) Matsuoka K, et al. Gastroenterol. 2022; 57(11): 867-878.

おしりの悩みチェック

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
体温(診察日)
下痢の回数(1週間の平均)
腹痛(1週間の状態)
  • 症状なし
    (全く痛みがない)
  • 少し痛む
  • かなり痛む
  • 我慢できない
    ほど痛む
便の形状を選択してください
選択してください

排膿の状態を選択してください ※膿が出る また、知らないうちにパンツが濡れている
選択してください
おしりの痛みはありますか?
選択してください
かゆみはありますか?
選択してください
出血はありますか?
不快感はありますか?
おしりの症状で、病院/クリニックを受診されていますか?
過去におしりの手術を受けたことがありますか?
おしりの診療についてお答えください。
どのあたりに症状がありますか?
場所がおわかりになる場合は、
その場所をクリックしてください。 ※同じ場所を再度クリックすることで取り消しができます。

受診をお悩みの方へ ~ 医師からのメッセージ ~

私たち医師や医療従事者は、日々多くの患者さんを診療し、さまざまな症状や病気を診ています。おしりや肛門の状態について医師へ話すこと、検査でそういった部位を見られることは決して恥ずかしいことではありません。検査や治療の際には、どうしてもおしりの一部を確認する必要がありますが、医師や看護師と視線が合わない方向に横になるなど、患者さんが恥ずかしさを感じない工夫をしています。

最初の診察では、ご自身が困っている症状や、その症状はいつから始まったのかなどを医師が質問します。その際に、どのように自分の症状を伝えればいいか迷うこともあるのではないでしょうか。また、口頭で伝えることが恥ずかしいと思う方もいらっしゃるかもしれません。

そんなときには、「おしりのチェックシート」を使ってみましょう。記入したシートを画像で保存、または印刷をして、診察の際に医師に提示することで、口頭での説明なしに症状を伝えやすくなります。
医師への伝え方が難しい、伝えることができない方はぜひご活用ください。

おしりの症状は放置すればするほど悪化し、適切な治療タイミングを逃す以外に、実は思わぬ病気が隠れている場合もあります。便に血が混じっていると、皆さんは痔と考えることが多いかもしれません。どの年代でも注意が必要ですが、特に10代から20代の方で下痢や腹痛が毎日続いたり、さらに血便も認められる場合、痔でなくクローン病だったという可能性も考えられます。このようなときは、診療科に「IBD」や「炎症性腸疾患」と記載されている消化器内科や消化器外科(肛門科も含む)の病院やクリニックを受診してもよいでしょう。
違和感を覚えたらすぐにチェックシートを使用して、恥ずかしさや悩みを抱えたままでいることなく、医師に相談しましょう。

IBD:炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)とは腸を中心とする消化管粘膜に炎症が生じる疾患です。潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)とクローン病(Crohn’s Disease:CD)の2つを総称してIBD(炎症性腸疾患)と呼んでいます。

全般的な状態
体温(診察日)
下痢の回数(1週間の平均)
腹痛(1週間の状態)
  • 症状なし
    (全く痛みがない)
  • 少し痛む
  • かなり痛む
  • 我慢できない
    ほど痛む
便の形状
おしりの状態
排膿
おしりの痛み
出血
不快感
かゆみ
おしりの症状で、
病院/クリニックを受診されていますか?
過去におしりの手術を受けたことがありますか?
おしりの診察について
症状がある場所
記載したチェックシートを持参して医師に相談しましょう。
(印刷したりスマートフォンの画面で医師に見せたりすることもできます。)